親記事 引用 |
|
あれからどのくらい飲んだのだろう…
種族の独特な言葉となまりのある日本語が酔いを更に助長する。
『大将おあいそ』
ドワーフ店長は会計の時だけ薄ら笑いを浮かべる。 バイトのポツコンがまるで待ってました!とでもいうかのように伝票を差し出してきた。 伝票を一瞥して内ポケットに手を差し入れた。
その時だった…
「いらっしゃ………」
ドワーフ店長の様子に違和感を感じつつその目線の先を見る
そこにいたのは過去にこの街を牛耳っていた(元)巣苦柄弐組の藤沢という人間だった。
かれこれ2年程前になるだろうか。
この街は巣苦柄弐組…と言うより藤沢に支配されていた。 藤沢は非道の限りを尽くし全種族を苦しめていた。 しかし種族たちがいつまでも耐えれる訳もなく小規模の暴動が起きたのは記憶に新しい。 そんな時、救世主の如く立ち上がり藤沢に反旗を翻したのが当時巣苦柄弐組の藤沢の所で若頭をやっていた通称リッキーという通り名の男だった。 リッキーは瞬く間に各種族を味方につけ藤沢を破門に追いやった。 それからのこの街は平穏を取り戻した様にみえた。
もう2年も前の話だ…
「大将酒だっ!」
ぶっきらぼうにいい放つ藤沢。
「藤沢さん。勘弁してくださいよ。いつも金払ってくれないんだから…」
ドワーフ店長の不貞腐れ顔が更に不貞腐れる
「うるせぇ!」
藤沢とドワーフ店長が睨み合う。
俺もポツコンもすっかり会計の事など忘れて見入っていた。
その時
「オヤジ。藤沢に飲ませてやれよ。金は俺が払う。」
藤沢の目が見開かれる。 完全に血の気が引いたその顔は怒りにも怯えにも取れる顔だった。
「久しぶりだな。ウジ沢」
俺はこの時、これが最後の神話の戦いの始まりになろうとは夢にも思っていなかった。
つづく |